普段お参りに行く自分の家のお墓が、誰の所有物かご存知でしょうか?
祖父や祖母、両親、兄弟などの身内の誰かが所有者となっていることが一般的です。
もちろん、ご自身がお墓の所有者であるケースもあるでしょう。
では、もしその人物が亡くなった場合、お墓は誰にどのように承継されるのでしょうか。
「私は長男じゃないからお墓を継ぐ立場にないし、関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、長男以外の方が承継者として指名されることも十分に考えられます。
いざ自分がお墓の承継者となった場合の心構えや手続きの進め方など、事前に知っておいた方が良いことはたくさんあります。また、もし自分が承継者にならなかった場合でも、お墓に関しては親族一同で助け合いながら対応していくことが大切です。
目次
承継者の決め方
お墓の承継者を決定する方法はいくつかあります。
一般的な方法は、親族で話し合いの場を設け、祭祀承継者を決めることです。
また、故人の遺言で承継者が指定されているケースも見られます。
具体的には、以下の3つの方法があり、上の項目から順に優先されます。
遺言による指定
親族間での話し合い
家庭裁判所による調停・審判
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
遺言による指定
お墓の名義人が亡くなった際、遺言でお墓の承継者が指名されていれば、その人物が祭祀承継者となります。遺言による承継者の指定は、他の方法に比べて優先されるため、最も確実な方法といえます。
生前に口頭で指定する方法も有効とされていますが、証明が難しい場合があります。そのため、確実に承継者を指定したい場合は、正式な遺言書を残しておくことをおすすめします。
親族間での話し合い
遺言にお墓の承継者についての記載がない場合は、親族間での話し合いによって決定します。
慣習に従い長男が承継しても問題ありませんが、本人と親族全員の同意が得られるのであれば、長男以外の人物がお墓を承継することも可能です。重要なのは、長男にこだわるのではなく、お墓の維持管理に最も適した人物に託すことです。
家庭裁判所による調停・審判
親族間での話し合いを重ねても祭祀承継者が決まらない場合は、家庭裁判所で決定することになります。まずは、調停手続きを行い、裁判官と調停委員を交えた話し合いで解決を試みます。
それでも承継者が決まらない場合は、審判による裁判官の判断に委ねられることとなります。
墓地・霊園によっては承継者の縛りがある
いざ承継者が決まっても、墓地や霊園によっては承継の許可がおりない場合があります。規則によって承継者の条件が定められている場合は、それに従う必要があります。
条件としては、以下のような例が挙げられます。
前名義人の長男に限る
前名義人から見て2親等以内の血縁者に限る
前名義人の血縁者に限る(親等は問わず)
親族間で話し合う際には、こうした条件が存在しないかを事前に確認することが重要です。もし該当する人物が承継するのが難しい場合は、墓地の管理者に相談してみましょう。

お墓の承継者の役割や権限
いざお墓を承継する立場になった場合、どのような役割を果たせば良いのでしょうか。承継者は墓参りをするだけでなく、以下のようなさまざまな役割を担い、同時に各種の権限も任されることになります。
・お墓の維持・管理
・法要を取り仕切る
・檀家としての役割を担う
・遺骨やお墓の所有権を持つ
それでは、これらの項目を詳しく見ていきましょう。
お墓の維持・管理
祭祀承継者は、お墓を継承する手続きを終えた後、祭祀主宰者としての立場を担うことになります。これにより、お墓を維持・管理する責任が生じます。定期的にお参りをするだけでなく、墓石の掃除や雑草の処理を行い、常にお墓を清潔に保つことが求められます。
さらに、墓地の管理費の支払いや納骨時の手続きなどの事務的な業務も、承継者が行わなければなりません。
法事を取り仕切る
一周忌や三回忌といった法事を執り行う際、中心となるのは祭祀主宰者です。
祭祀主宰者は、ご住職への法要依頼や日程の調整をはじめ、会食の場所の確保、遠方から訪れる参列者の交通手段や宿の手配など、さまざまな準備を担います。これらの準備を円滑に進めるためには、綿密な段取りが欠かせません。
法事が滞りなく進行するよう、計画的かつ丁寧に対応することを心がけましょう。
檀家の役割を担う
寺院墓地にお墓を建てる際、通常は檀家になる必要があります。
また、寺院墓地にお墓がなくても、既にどこかの寺院の檀家になっているケースも考えられます。
檀家になると役割や義務が生じます。
寺院やご住職の考え方によって具体的な内容は異なりますが、主に以下のようなものがあります。
寺院内の清掃
団体参拝への参加
寄付やお布施などの金銭的負担
なお、檀家になる必要がない寺院墓地も存在します。檀家の役割を果たすことが難しいと感じる場合は、そのような墓地を探してみるのも一つの方法です。
寺院内の清掃
檀家は、陰に陽に寺院を支える役割を担っています。
墓地を含めた寺院全体の清掃も、その大切な役割の一つと言えます。
年に一度の大掃除や、檀家が交代で定期的に清掃を行うなど、寺院によって手伝いの頻度やペースはさまざまです。
団体参拝への参加
団体参拝とは、その寺院の檀家が集まり、総本山(またはそれに準ずる場所)へお参りに行くことを意味します。
「開祖誕生から◯◯年」や「開宗◯◯周年」といった節目の年には、特によく行われます。
仕事などの事情で参加できない場合もありますが、できる限り参加した方が良いでしょう。
団体参拝は、総本山へのお参りという目的に加え、慰安旅行的な意味合いも含まれることが多く、他の檀家との交流を深める良い機会となります。普段の法要時などで見るご住職とはまた違った一面が見られるかもしれません。
寄付やお布施などの金銭的負担
老朽化に伴う本堂の建て替えや墓地の整備など、寺院で多額の出費が必要となった際には、檀家に寄付を求められることがあります。
また、お正月に行われる修正会(しゅしょうえ)やお盆の盂蘭盆会(うらぼんえ)といった定期的な行事で供養をしていただいた際には、お布施の支払いも必要です。
本来、寄付やお布施は自身の気持ちに従って行うものであり、義務ではありません。しかし、檀家となることは、経済的な面で寺院を支える役割を担うという側面もあります。そのため、寄付やお布施は事実上ほぼ必須と考えられることが多いです。
遺骨や墓石の所有権を持つ
お墓に納められている遺骨や墓石そのものの所有権は、墓地の名義人のもとにあります。つまり、それらを別の場所に移したり、墓じまいをするといった場合の最終的な決定権は、名義人である祭祀主宰者が持っているのです。
とはいえ、お墓に関する事を独断で決めてしまうと、親族内での不和に繋がりかねません。事前の話し合いの上で、しっかりと合意を得てから行動に移すことが大切です。
また、お墓が建っている土地については、所有権がないということを知っておく必要があります。日本では法律によって、個人が墓地を所有することが認められておらず、永代使用権が与えられるという解釈となっています。
お墓を建てるために支払った金額は、永代にわたって墓地として使用するための権利を取得するためのものであり、墓地そのものを自分で所有するわけではありません。したがって、誰かに転売したり、お墓を建てる以外の用途に利用することは固く禁じられています。
お墓を承継する際の手続きの流れと必要な書類
お墓を承継するには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
実際には、お墓の承継=墓地の名義人変更であり、ここでは墓地の名義人を変更するための手続きを紹介いたします。
まず、事前に以下の書類を準備する必要があります。
・名義変更申請書(承継使用申請書)
・戸籍謄本
・本籍地記載住民票
・墓地使用許可証明
それぞれの書類について、詳しく解説していきます。

名義変更申請書(承継使用申請書)
墓地によって書式が異なるため、まずは管理者に問い合わせて確認しましょう。
戸籍謄本
旧名義人の死亡が記載された戸籍謄本と、新たに名義人となる方の戸籍謄本の両方が必要です。
本籍地記載住民票
新名義人の本籍地が記載された住民票を1通取得します。
墓地使用許可証
旧名義人の名前が記載された墓地使用許可証は一旦返還する必要があります。手続きが全て完了すると、名義人の名前が書き換えられて返却されるか、または新しい許可証が発行されます。
全ての書類・申請が受理されると墓地使用許可証を受け取れる
すべての書類が揃い、申請書に必要事項を記入したら、管理者に提出します。その際、手数料が必要となることが多いため、事前に金額を確認しておきましょう。
申請が受理された後、内容に不備がなければ墓地使用許可証を受け取ることができ、名義人変更手続きは完了です。
以上、一般的な手続きの流れをご紹介しましたが、墓地や霊園によって必要な書類が異なる場合があります。まずは管理者に連絡し、名義人変更の手続きについて確認しておきましょう。

